東南アジア原産のこの花は日本では最もポピュラーな洋ランで「ファレノプシス(コチョウラン)」に並んで贈答用にも重宝される美しいランです。
花色も白色や黄色、薄いピンクから濃いピンク、そして個性的な緑色など数多くあります。
すっくと立った花茎につく花は「貴婦人」に例えられてきましたが今では垂れ下がるように咲く品種も人気です。
花数も多く花もちのよいシンビジュームをご紹介します。
- シンビジュームとはどんな花?
- シンビジュームの花言葉
- シンビジュームがかかりやすい病気とその対策方法
- シンビジュームの名前の由来
- シンビジュームの開花時期
- シンビジュームの花を咲かせるポイント
- 種類(原種、園芸品種)など
- まとめ
1. シンビジュームとはどんな花?
シンビジューム(Cymbidium)はシンビジウムともシンビデュームとも呼ばれ、南アジアに自生しているものを品種改良されたものが多く流通しています。
日本でも品種改良が盛んに行われている花になります。
シンビジュームの株元には茎の一部が丸く肥大した「バルブ」という部分があってその部分に栄養分や水分を貯めており、花はバルブから出ている花茎に咲きます。
一般的なシンビジュームの花茎は立ち上がってたくさんの花芽をつけ、その後アーチ状になって開花するのですが、ここ最近は花茎が下垂するタイプの品種キャスケードタイプも人気が出てきています。
葉は細長く濃い緑色をしています。
2. シンビジュームの花言葉
- 「飾らない心」
- 「素朴」
- 「華やかな恋」
- 白色のシンビジュームの花言葉「深窓の麗人」
- ピンク色のシンビジュームの花言葉「気品のある女性」「素朴」
- 黄色のシンビジュームの花言葉「誠実な愛情」
- 緑色のシンビジュームの花言葉「野心」
2-1. 「飾らない心」
シンビジュームの花色は同じラン科のカトレアやデンドロビウムの鮮やかな原色に近い花色に比べるとやや落ち着いた花色をしているものが多いことが由来しているそうです。
2-2. 「素朴」
「飾らない心」と同様にシンビジュームはナチュラルカラーの花色がやや多いことからつけられました。
2-3. 「華やかな恋」
シンビジュームの草丈は30cmから80cmととても大きく、花茎か溢れんばかりに咲き誇る花々を「華やかな恋」に例えたそうです。
2-4. 白色のシンビジュームの花言葉「深窓の麗人」
「深窓の麗人」とは家の中の奥深い部屋で大切に育てられた令嬢という意味です。
白色のイメージは「神聖」「清潔」「清純」などがあります。
濃緑の葉の中から白花をつけるシンビジュームを大切に育てられた世俗の穢れを知らない清純な令嬢みたててつけられたといわれています。
2-5. ピンク色のシンビジュームの花言葉「気品のある女性」「素朴」
淡いピンク色のに麗しい花をつけるシンビジュームを控えめで上品な女性に例えてつけられました。
2-6. 黄色のシンビジュームの花言葉「誠実な愛情」
黄色といっても淡色系の多いシンビジュームに「誠実さ」をイメージされてはつけられたようです。
2-7. 緑色のシンビジュームの花言葉「野心」
同系色の緑の葉の中からきらびやかな花を咲かす様子を「秘かに時を待つ野心家」に例えられたようです。
3. シンビジュームがかかりやすい病気とその対策方法
どの病気の場合も栽培管理に使用するハサミなどが感染源ということがあります。
ハサミなどの道具は必ず消毒してから使用するようにしましょう。
またしぼんだ花はこまめに取り除きます。
- ウイルス病
- 炭そ病
- 軟腐病
- 害虫:ナメクジ、アブラムシ、カイガラムシなど
3-1. ウイルス病
アブラムシの食害やハダニから感染したり植え替えを行うときに手やハサミなどにウィルスが付着していることによって感染します。
ラン科植物のウィルス病についての最も古い記録にも書かれている「シンビジュームモザイク病」は感染すると葉脈に沿って途切れ途切れに色が薄くなったり、まだら模様になってきてきます。
まだら模様が拡大してモザイク状態になってきます。
感染した部分は葉の細胞が壊死していき淡褐色から黒褐色のまだらになります。
対処法:ウィルス病は薬剤で治すことができません。
感染を予防することが大切です。
予防法
・栽培管理の道具を消毒する・植え替え時や株分けをするときには同一の容器内の水で洗わない
・アブラムシやハダニがつかないように防除する
3-2. 炭そ病
葉に淡褐色の大型の病斑ができます。
病斑の周囲は黒褐色に変色します。
カビが原因の病気です。
ひどくなると葉が黄色くなり落ちてしまいます。
日焼けなどで株が傷んだときに発生しやくすなります。
対処法:
早く発見することが大切です。
病変部を発見したら病変部から1cm以上離して切り取ります。
切り取ったあとは株全体に殺菌剤を散布します。
3-3. 軟腐病
葉の基部、バルブ、根がブヨブヨになっていきだんだんと褐色になって悪臭がします。
葉は黄褐色に変色してきます。
軟腐病は細菌性の病気で急速に広がって枯死してしますことがあります。
対処法:
葉やバルブで発生した場合は早めに病変部を取り除いて殺菌剤を塗布して菌の繁殖を抑えます。
株に大半で症状が見られた場合は残念ですが他の植物に感染しないように早めに病気にかかった株を処分します。
予防法:
昆虫の噛み痕などからも感染するので害虫の駆除も大切です。
初夏から夏の間に2~3週間おきに予防散布剤をまきます。
3-4. 害虫:ナメクジ、アブラムシ、カイガラムシなど
ナメクジ:
せっかくの花芽や花弁を食害します。
誘引剤で対処しましょう。
アブラムシ:
ツボミの中に潜んでいることが多いです。
繁殖力が強いため見つけたら直ちに薬剤を使用して対処します。
カイガラムシ:
カイガラムシはやわらかい体をもつ幼虫のうちは薬剤がききますが、成虫になってしまうとかたい殻につつまれていて薬剤がききません。
葉が痛むと病気になりやすいの塗れたティッシュや綿棒でこそぎ落とします。
霧吹きで水を与えることで予防できます。
4. シンビジュームの名前の由来
ラテン語の「シンバ(cymba:舟の意)」から派生したといわれています。
唇弁(ラン科植物にみられるくちびる状の花びら)を舟の形にみたててつけられたようです。
5. シンビジュームの開花時期
開花期は12月から4月です。
特に3月から4月がピークです。
6. シンビジュームの花を咲かせるポイント
- 「芽かき」
- 「花が咲き終わったら茎を根元から切る」
- 「肥料はしっかりと」
- 「ツボミがついたら乾燥に注意」
- 「春に植え替え」
6-1. 「芽かき」
4~5月頃に花が終わると新しい葉の芽がたくさん出て来ます。
すべての葉の芽を育ててしまうとひとつひとつの芽が太りきらずに花がつきにくくなってしまうので適当な数に減らします。
芽を横に倒して、芽が途中で折れてしまわないよう注意しながら芽を折ります。
春に出た芽は1本のバルブに太いものを大型のシンビジュームの場合は2本、小型や中型のシンビジュームの場合は3本選んで残し、あとの芽はすべてかきとります。
秋の芽かきの場合、バルブにも花芽がついてきます。
花芽と一緒に葉の芽もついてくることがあるため、葉の芽は全てはかきとります。
花芽と芽の違いは「丸みがあり、触るとやわらかく、横に広がって伸びている」芽は花芽です。
対して葉の芽は「細長くて厚みがあまりない、触るとかたい、上に向かって伸びている」特徴があります。
間違って花芽をとってしまわないように花芽と芽の違いに気をつけて芽かきをしましょう。
6-2. 「花が咲き終わったら茎を根元から切る」
シンビジュームの花がしぼんだら、茎を根元ごと切り取ります。
しぼんだ花がまだ元気に咲いている他の花に触れると、元気な花までしぼんでしまいます。
花が終わった花茎からは新しい花は咲かないので早めに根元から切り切って支柱を外します。
6-3. 「肥料はしっかりと」
シンビジュームは肥料をたくさん必要とします。
春に新芽が出てきたら、1~2ヵ月に1回ほど固形肥料を置き肥したり骨粉いり油粕を根元に置きます。
花が咲き終わった後から春の生育期にしっかり与えますが7月ごろには休止します。
生育期間中は液肥を月に2回ほどやります。
7月からは肥料を与えなくても大丈夫です。
あまり遅くまで肥料が与えていると逆に花芽がつかなくなります。
6月から9月の間に花芽をつけようとします。
そのころにチッソ肥料分が少なくなっていないと花芽がつきにくくなります。
6-4. 「ツボミがついたら乾燥に注意」
シンビジュームは水が大好きな植物です。
ただやはり過湿は嫌うので気をつけます。
ミズゴケや土が乾いたら水をあげます。
指で触ってみて湿っていたら水をやる必要はありません。
シンビジュームはバルブに水分を貯蔵できるので少々の乾燥には強いのですが、ツボミがついている時に乾燥しすきているとせっかくついたツボミが落ちてしまうことがあります。
6-5. 「春に植え替え」
2~3年に1回は春に植え替えます。
適した時期は4月から5月。
鉢一杯に根がはっている株をひと回り大きな鉢に植え替えます。
バルブの数が多くなっている株は2から3個でひと株になるようにナイフやはさみで切り分けて植え替えます。
7. 種類(原種、園芸品種)など
- シンビジューム・エリスロスティルム〔Cymbidium erythrostylum〕
- シンビジューム・インシグネ〔Cymbidium insigne〕
- シンビジューム・ロウイアナム〔Cymbidium lowianum〕
- シンビジューム・デボニアナム〔Cymbidium devonianum〕
- シンビジューム・カンラン〔Cymbidium kanran〕
7-1. シンビジューム・エリスロスティルム〔Cymbidium erythrostylum〕
ベトナム原産の原種で半着生種。
花径約10cmの花弁が平開せずに前に突き出たような白い花をつけます。
くちびる状の花びら部分が赤く艶やかです。
7-2. シンビジューム・インシグネ〔Cymbidium insigne〕
ベトナム、タイ、海南島などに分布。
シンビジュームの改良に重要な役割を果たした原種の一つです。
薄いピンク色の花を咲かせます。
7-3. シンビジューム・ロウイアナム〔Cymbidium lowianum〕
中国、タイ、ミャンマーに分布する原種です。
花色は黄色から黄緑色でくちびる状の花びらの先端が赤いくV模様が入っているのが特徴です。
7-4. シンビジューム・デボニアナム〔Cymbidium devonianum〕
インド北部~タイの高地に分布する着生蘭の原種。
一般的なシンビジュームと比べ、葉が広く3cmほどあります。
野生では樹上で成育しています。
花茎を垂れるようにしてたくさんの花をつけます。
花茎が下垂するキャスケード・タイプの交配種の親として知られています。
7-5. シンビジューム・カンラン〔Cymbidium kanran〕
学名も和名もカンランで漢字では「寒蘭」と書きます。
小型の東洋ランで細い花びらを持つ花を数個つけた姿はツルが飛んでいるかのように見えます。
寒蘭は昔は葉を鑑賞するために栽培されていましたが段々とその花を鑑賞するようになったといわれています。
まとめ
丈夫で寒さにも比較的強いシンビジュームはランの中では育てやすい植物です。
花の時期には茎が倒れんばかりの花をつけてくれるシンビジュームを栽培してみてはいかがでしょうか。