一口に日本語と言っても、様々な言葉があります。
昔の実際の出来事から成り立った言葉、たとえである比喩表現、音や様子を表す擬音語や擬態語。
様々な言葉がありますが、同じ言葉でも受け取り手で印象や解釈が変わる事もあります。
今回ご紹介する「含蓄」という言葉には、様々な深い意味が込められています。
難しい言葉ですが活用できれば一目置かれるような言葉ですので、正しく意味を理解して使いましょう。
- 「含蓄」の意味とは?
- 「含蓄」の類語や言い換え
- 「含蓄」の使い方
- 「含蓄」を使った例文
- 「含蓄」を使った言葉を解釈
- 「含蓄」と「蘊蓄」の違い
- まとめ
1. 「含蓄」の意味とは?
「含蓄」とは、「表現が、ある深い含みを持つ事」や「内に含みを持っている」という意味です。
表立って表現されていない深い内容や意味を含んでいるという意味です。
直接的には表現せずに、受け取り手の方に深い意味や味わいを感じさせたり、考えさせたりするような深い含みを持つ表現だということを指しています。
つまり、簡単に言うと「直接的ではなく、遠回しに表現をする」というイメージです。
- 「含蓄」は受け取る側が感じる事
- 「含蓄」の読み
1-1. 「含蓄」は受け取る側が感じる事
例えば、男性の後ろ姿を描いた絵画があったとしましょう。
その作者は男性の後ろ姿の絵を通じて「人間の苦悩」を、絵画を見た人に伝えたいと考えたとします。
見た人に手っ取り早く伝えるなら、その絵に「苦しいよ」というようなセリフでもつければ誰だってすぐにわかるでしょう。
しかしあえてそれをせずに、使う色や描き方だけで、単なる後ろ姿という情報以上に「人間の苦悩」を見た人へ感じさせる工夫をして描きます。
これが「含蓄」です。
表はただの「男性の後ろ姿の絵」でも、それを見た側が表にはっきりとわかる形では出てきていない作者の思いや感情、深い味わいや意味を感じ、「作者はこういう思いを伝えたかったのかもしれない」という思いへ至ることができるような絵は、「含蓄のある絵」だと表現できます。
つまり、「含蓄」というのは表現を受け取る側がその深い意味に気づくこと、感じることが大前提です。
1-2. 「含蓄」の読み
「がんちく」と読みます。
2. 「含蓄」の類語や言い換え
「含蓄」と似た意味を持つ言葉を2つご紹介します。
- 「暗示」
- 「内包」
2-1. 「暗示」
「あんじ」と読みます。
主に意味は2つあり、1つ目は「物事を明確には示さず、手がかりを与えてそれとなしに知らせること」、2つ目は心理的な意味で「他人の心に無意識のうちに、ある観念を与えるような刺激」です。
「暗に示す」と書くように、はっきりとわかるように何か物事を示すのではなく、物事に関する一部分の情報や手掛かりだけで相手へそれとなく伝えたり、示したりすることを指します。
2-2. 「内包」
「ないほう」と読みます。
「ある物がその内部に別の物を持っている」ということを意味する言葉です。
「含蓄」にも、「内に含んでいる」という意味がありますが、それと同じ意味合いの言葉です。
3. 「含蓄」の使い方
「含蓄」は名詞ですので、「含蓄のある」や「含蓄が深い」といったような形で使います。
「含蓄」という言葉はあまり普段の会話で使う人は少なく、突然「含蓄があるね」と言われてもピンとこない人の方が多いでしょう。
会話で使うよりも、文章表現として使った方が無難です。
また、正しく「含蓄」を使う場面としてふさわしいのは、何かを見聞きした受け取り手が表には出てきていない深い意味を感じたり、考えたりしたときです。
情報や作品を発信する側が使う言葉ではありませんので注意しましょう。
4. 「含蓄」を使った例文
含蓄を使った例文2つをご紹介します。
例文を参考に理解を深めましょう。
- 「含蓄」の例文1
- 「含蓄」の例文2
4-1. 「含蓄」の例文1
「彼はいつも含蓄のある話を聞かせてくれる」
「含蓄」とは、直接的に表現せず、受け取り手に感じさせるように含みを持たせるような表現を指します。
「含蓄のある話」とはどういったものでしょうか。
あくまで「含蓄のある話」というのは、受け取り手によって違うことを頭に入れておきましょう。
受け取り手が、「なんだか深い意味がありそうだな」や「もしかしたらこういう意味があるのではないか」と感じたり考えたりするような、深い含みを持つことが「含蓄」です。
受け取り手が何も感じなければ意味がありません。
例えば「止まない雨はない」という話を聞いて、ただ単に「雨はいつか止むものなんだな」と思う人もいれば、「そうか。
雨が止まないことがないように、嫌なこともきっといつかは終わるということか」と深読みする人もいるでしょう。
この場合、後者のように話された内容の意味を深く考え、その話に含まれた別の深い意味を受け取れた人が「含蓄のある話を聞いた」と表現できるのです。
4-2. 「含蓄」の例文2
「ゴッホの絵はどれも含蓄がある」
特に「含蓄」という言葉を深く感じさせるのは、この例文にもあるように「絵」が一番わかりやすいでしょう。
模写しただけの絵ももちろんありますが、作者が何かテーマを抱いて描き上げた絵には、表面だけではわからない深い意味を感じさせるものばかりです。
普通の人は使わないような色合いにしたり、表情やポーズを独特なものにしたりと、工夫を凝らした絵には、言葉にしなくても伝わってくる気迫や思いが込められています。
このように、見た目は「絵」でもその内に含まれた深い意味や味わいのことを「含蓄」を使って表現することができます。
5. 「含蓄」を使った言葉を解釈
「含蓄」によく使われる言葉の形として、2つご紹介します。
- 「含蓄の深い」
- 「含蓄に富んだ」
5-1. 「含蓄の深い」
「含蓄」という言葉自体に「表には出ていない深い含みを持つこと」という意味がありますが、それに更に「深い」という形容詞が付いています。
ここで「深い」が表しているのは、「物事の程度や分量、かかわりが多い」という意味です。
つまり、「含蓄の深い」というのは「表には出ない深い含み、味わいが非常に多い」ということです。
「含蓄の深い作品」や「含蓄の深い本」というように、「含蓄の深い〇〇」という形で使います。
5-2. 「含蓄に富んだ」
「富む」というのは、「お金持ちになる」という意味と「たくさん持っている、豊富である」という意味があります。
「含蓄に富んだ」の「富んだ」は後者の意味で、「含蓄が豊富」ということです。
つまり、「物事のうちに含まれている深い意味や、表現の味わいが非情に多く込められている」ということです。
「含蓄の深い」と同じように、「含蓄に富んだ話」や「含蓄に富んだ映画」というように、「含蓄に富んだ〇〇」という形で使います。
6. 「含蓄」と「蘊蓄」の違い
「蘊蓄」とは「うんちく」と読みます。
漢字は見慣れなくても言葉として耳にするとわかる方が多いでしょう。
漢字にするととても仰々しい字になりますね。
「蘊蓄」と「含蓄」は同じ漢字が使ってあったり響きが似ている為混同しそうですがまったく意味が違います。
「含蓄」は冒頭でも説明したように「含みを持った表現」や「表に表れないうちに含み持たれている深い内容や意味」という意味の言葉です。
対して「蘊蓄」は「十分研究してたくわえた深い知識」を指す言葉です。
その物事について、深く調べつくし身につけた知識の事です。
誤用しないように注意しましょう。
まとめ
言葉というのは便利です。
悲しいときには「悲しい」と言えば、誰にでも伝わります。
しかし、同じ「悲しい」という気持ちでも「胸が痛い」という言葉を聞いた方が、何だかより深い悲しみが伝わってきませんか?そういった、含みを持たせた「含蓄のある表現」ができると、伝える側と受け取る側のコミュニケーションがもっと深まるかもしれません。
しかし、相手に真意が伝わらなければ「含蓄がある」とは言えません。
わかりやすく相手に伝わる言葉を選びつつ、表現に深みを持たせられるようにするのは非常に難しいものですね。